天沼矛(あめのぬぼこ)で下界をかき回し、日本で最初に生まれた特別な島です。
日本で最古の歴史書『古事記』の冒頭を飾る「国生み神話」。そこには、伊弉諾尊・伊弉冉尊の二柱の神様が生まれたばかりの混沌とした大地を天沼矛で「塩コオロコオロ」とかき回すと、矛先から滴り落ちた塩の雫が固まって「おのころ島」ができたと記されています。
おのころ島で夫婦となった伊弉諾尊・伊弉冉尊は、日本列島の島を次々と生んでいきます。その中で最初に生まれた島が淡路島です。
二柱の神様が沼矛で下界をかき回し、落ちた塩の雫からおのころ島が生まれた描写は、「海人(あま)」が生業とした塩づくりの様子に重なります。また、沼矛でかき回すことによって下界が渦巻くさまを記した場面は、海人が活躍した鳴門海峡の巨大な渦潮を想像させます。
現在も鳴門海峡では世界最大級の渦が巻き、島の内外には絵島や沼島、自凝島(おのころじま)神社などおのころ島の伝承地がいくつも点在します。また、国生み神話ゆかりの「えびす舞」を起源とする淡路人形浄瑠璃も地元の淡路人形座によって大切に伝承されてきました。
古事記編纂から千三百年の時を経て、脈々と受け継がれてきた壮大な天地創造の物語。淡路島は今も、国生み神話を始まりとする悠久の時を刻み続けています。